低消費電力リーファーモニタリングシステムのためのLoRa

Introduction

本記事は、SenzMate (Pvt) Ltd.でのインターンシップ期間中にLoRa技術について学んだ内容をまとめたものである。LoRaの定義、リーファー(冷凍・冷蔵コンテナ)監視システムにLoRaが選ばれた理由、そしてこの用途において効果的に消費電力を抑える仕組みについて解説する。

  1. LoRaの定義
  2. リーファー監視システムにLoRaが選ばれた理由
  3. この用途において効果的に消費電力を抑える仕組み
lora chart

LoRaとは

LoRa(Long Rangeの略)は、Semtech Corporationが保有する通信技術である。チャープ・スプレッド・スペクトラム(CSS)方式を起源とする変調技術で、M-ary FSK変調に近く、サブGHz帯で動作する。サブGHz帯の無線周波数を利用するため、リーファー監視システムや地中データ監視システムなど、長距離通信や高い透過性が求められる用途に適している。Bluetooth、2G、3G、4G、IEEE 802.11、IEEE 802.15.4といった他のプロトコルとは異なり、LoRaはSemtech製のデバイスでのみ動作する。また、LoRaが利用するサブGHz帯の範囲は地域によって異なり、2017年発行の「LoRaWAN 1.1 Regional Parameters」文書によれば、スリランカで許可されているLoRaのサブGHz帯は433.05〜434.79MHzである。なお、LoRa変調技術を物理層で用いるMAC層プロトコルとしてLoRaWANなどが存在する。

なぜLoRaがリーファー監視システムに適しているか

リーファーコンテナ監視システム向けの通信技術を選定する際に考慮すべき主な要件は以下の通りである。

  1. リーファーコンテナは密閉された低温環境であるため、その内部でも通信技術が機能する必要がある
  2. リーファーコンテナは厚い金属製で、内部には断熱用のフォームが使用されているため、通信技術はコンテナを透過できる必要がある
  3. データ監視はリーファーヤードのマスタールームや運転手のキャビン内で行われるため、通信範囲を考慮する必要がある
  4. 通信技術は、多対1(マルチポイント・トゥ・ポイント)ネットワークに対応する必要がある
  5. スレーブノードの消費電力を最小限に抑える必要がある

これらの要件に基づき、複数の通信プロトコルについて詳細な比較検討を行った。

  1. 拡散係数(Spreading Factor, SF):1つのシンボルに含まれる生ビット数を表し、値は6〜12の範囲で変化する。シンボル数は2のSF乗となる。 𝑆𝐹 .
  2. 符号化率(Coding Rate, CR):LoRaモデムは、リンクの堅牢性を高めるため、巡回誤り符号化による前方誤り検出・訂正を行う。値は1〜4の範囲で設定できる。
  3. 帯域幅(Bandwidth, BW):帯域幅(チップレートとも呼ばれる)はデータ速度を左右する。BW・SF・CRの組み合わせからビットレートを導出できる。動作周波数はバンド2(410〜525MHz)に該当する。bit rate .
  4. bit rate
  5. 動作周波数はバンド2(410〜525MHz)
  6. 巡回冗長検査(CRC)モード:信頼性の高い誤りのないデータ伝送を確保するために有効化するオプションである。
  7. ) プリアンブル長:パケットの先頭部分の長さを指す設定項目である。

これらのパラメータを調整することで、消費電力・通信範囲・透過力をある程度制御できる。試験用途では、Semtech製のSX1276/77/78/79モジュールを433MHzのサブGHz帯で使用できる。

Time on Air(ToA)とパラメータの関係

試験用途では、Semtech製のSX1276/77/78/79モジュールを433MHzのサブGHz帯で使用できる。

LoRaの主要パラメータ

Time on Air(ToA)は、送信機から受信機へパケットを送信するのに必要な時間を指し、以下の式で表される。

ToA(伝送時間)= T_packet(パケット送信時間)= T_preamble(プリアンブル送信時間)+ T_payload(ペイロード送信時間)

理想的な系では伝搬遅延が無視できるほど小さいため、ToAはほぼパケット配送時間と等しくなる。ToAが大きいほど通信範囲は広がるが、パケットサイズ(含まれるビット数)が増えるため、送信に必要な消費電力も増加する。信号が弱く干渉が大きい場合はより高いSFを使用する必要があり、その結果ToAも大きくなる。通信ノード間の距離が離れ信号が弱くなる状況では、SFを高くすることで1シンボルあたりのビット数が増え、パケット損失の確率が下がり、伝送の信頼性が向上する。ただしSFを高くするとビットレートは低下する。透過力は基本的に送信出力に依存し、実測では17dBmの出力で厚さ1mmの金属バリアを透過し、20〜25mの範囲で通信できることが確認された。

パラメータ調整の目安としては、データレートをそれほど重視しない場合は、帯域幅とSFを下げることでリンクバジェットを高め、符号化率を上げることで信頼性を高められる。一方、データレートを重視する場合は、他の2つのパラメータを最大限に保ちつつ帯域幅を上げることができるが、その場合ToAと通信範囲は縮小する。

データレートをそれほど重視しない場合は、帯域幅とSFを下げることでリンクバジェットを高め、符号化率を上げることで信頼性を高められる。データレートを重視する場合は、他の2つのパラメータを最大限に保ちつつ帯域幅を上げることができるが、その場合ToAと通信範囲は縮小する。

通信範囲に影響するパラメータ

  1. 拡散係数(SF) — 高いSFが望ましい
  2. 帯域幅(BW) — 高いデータレートには高いBWが望ましいが、BWを上げるとToAが減少し、通信範囲が狭まる
  3. パケット長 — パケット長はToAに直接影響し、パケット長が長いほど通信範囲は広がる
  4. 符号化率(CR) — CRを上げるとToAが増加し、伝送の信頼性も向上するため、通信範囲が広がる
  5. 送信出力 — 一定の制約の中で設定可能。SX1278では11dBmから20dBmの範囲で設定できる

こうしたパラメータから導かれるToAは、モジュールの消費電力と通信範囲の双方に直接影響する重要な指標である。それでも、Bluetooth、WiFi、GSM、3G、4G LTE、5Gといった他の通信技術と比較すると、LoRaの消費電力ははるかに小さい。

  • Trx/受信モードの動作時間(ms)
  • Tmeas:測定モードの動作時間(ms、使用技術・用途により異なる)
  • Ta(アクティブ時間)
  • Ta(アクティブ時間)= Ttx+Trx+Tmeas
  • U:自己放電を考慮した使用可能容量(%)
  • N:1日あたりのアクティブ回数
  • cU:放電率を考慮した容量(mAh)= C*(U/100)
  • T:1時間あたりのミリ秒 = 3600000
  • cA:1日あたりのアクティブ時消費容量
  • cS:1日あたりのスリープ時消費容量
  • cT:1日あたりの総消費容量 = cA+cS
  • バッテリー寿命(日数)= (cU/cT)/24
    バッテリー寿命(年数)= days/365.24

消費電力の計算

Semtech社が示す手順に基づき、上記の設定条件から必要な消費電力を計算できる。

計算に用いる変数は以下の通りである。

  • C:バッテリー容量(mAh)
  • BL:バッテリー寿命(年)
  • Is:スリープモード時の電流(mA)
  • Itx:送信モード時の電流(mA)
  • Irx:受信モード時の電流(mA)
  • Imeas:測定モード時の電流(mA、使用技術・用途により異なる)
  • Ttx:送信モードの動作時間(ms)
  • 理論上、SF=7、キャリア周波数433MHz、符号化率1、帯域幅125kHz、送信出力11dBmという最も省電力な設定では、620mAhのバッテリーで23年間動作可能という計算結果が得られた。この条件下では、建物などによる干渉がある場合でも、リーファーコンテナ内で最大100mの通信範囲が確認された。

最も省電力な設定

Check the examples given below, Assume the battery capacity is 620mAh

low power

通信範囲を広げた設定

一方、通信範囲を広げるためにSFを12、CRを4、送信出力を17dBmまで上げ、10分(60,000ms)ごとに送信パケットを送る設定にすると、消費電力は相対的に高くなる。

ここでは10分(60,000ms)ごとに送信パケットを送る。バッテリー容量は620mAhと仮定する。

power equation

1年間の連続稼働には1,905mAhのバッテリーが必要になる。それでも、他の通信プロトコルと比較すれば、これは依然として大幅な省電力である。

まとめ

結論として、LoRaは他の長距離通信プロトコルと比較して、より柔軟な通信技術であるといえる。一定の制約はあるものの、パラメータを調整することで通信の特性を用途に応じて変更できる点が強みである。バッテリー消費は非常に少なく抑えられる一方、得られる通信サービスの質は高い。リーファーコンテナ監視システムを商用製品として展開する上で、LoRaは無線かつ安定した、多対1(ポイント・トゥ・マルチポイント)の通信ネットワークを構築するための優れた選択肢である。

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